幼稚園バスへの置き去り事故を防ぐために | 原因と対策を解説
近年、幼稚園・保育園バスにおける置き去り事故が発生しています。中には熱中症などで園児が体調を崩してしまうケースも少なくありません。そこでこの記事では、幼稚園・保育園バスで置き去り事故が発生する原因を分析し、そのような事態を防止するために現在取られている対策について紹介します。
2023年4月から設置が義務付けられた「置き去り防止安全装置」についても解説するので、小さいお子さんに接する機会のある方はぜひ参考にしてください。
Contents
幼稚園・保育園バスへの「置き去り」が相次いでいる
幼稚園・保育園バスへの置き去り事故が幾度となく発生しています。2021年7月の福岡県での置き去り事故、2022年9月静岡県で起こった置き去り事故では、いずれも園児が熱中症で死亡する事態にまで発展しました。
幼い子どもがバスの中に置き去りにされてしまうと自力で脱出するのは困難です。特に夏場は短時間で車内が高温となるため、熱中症の危険が高まります。
施設側は置き去り事故が発生しないよう徹底して対策をとる必要があるのです。当然のことではありますが、できていない施設が多くあるため度々事故が発生しています。
そもそもなぜ置き去り事故が発生するのか、原因を解説します。
置き去り事故の原因とは
保育園・幼稚園バスでの置き去り事故が発生する原因としては、主に次の3つが考えられます。
- 子どもがバスを乗り降りする時の人数確認が不十分
- 子どもが全員バスを降りた後の車内確認が不十分
- 幼稚園・保育園での出欠確認が不十分
それぞれ詳しく見ていきましょう。
子どもがバスを乗り降りする時の人数確認が不十分
置き去り事故が発生する原因として、子どもがバスを乗り降りする時の確認を十分に行っていなかったという点が挙げられます。もし、降りた人数が乗った人数より少ないと気づければ、バスの中を確認するなどの対応ができます。
そのためバスで子どもを送迎などする際は、その日の乗車人数を確実に把握しバスを降りた子どもの人数が予定と合っているか、名前もあわせてしっかり確認するようにルール化している施設が多くあります。
子どもがバスを降りる時、名前と人数を確認することなく次の業務に進んでしまうと置き去り事故につながってしまう可能性が発生します。
子どもが全員バスを降りた後の車内確認が不十分
置き去り事故が発生する2つ目の理由として、子ども全員がバスを降りて無人になったはずの車内を確実に点検していなかったという点が挙げられます。バスの車内は、背もたれ・座席下・荷物スペースなど死角となる箇所が多くあり、子どもが眠ったりしていた場合、運転席から確認しただけでは見落としてしまう可能性があります。
施設によっては、クッションや毛布などを車内に置きっぱなしにしているケースもあるため車内の備品に隠れていないかも確認することと、常時車内に置いておくのではなく備品使用時に車内に持ち込むよう徹底している施設も多いです。
子どもがバスを降りた後に死角を含め、バス車内の全ての点検を確実に行わないと子どもがバスの中に長時間置き去りになる可能性があります。
幼稚園・保育園での出欠確認が不十分
置き去り事故を防ぐためには、幼稚園・保育園で確実に出欠確認を行う必要があります。出欠確認を行っていれば、その時点でいるはずの子どもがいないことに気づくことができます。子どもの保護者に連絡をとるなどすることで、置き去りの可能性にも気づくことができるのです。
ほかにも、園内の登園管理システムが適切に運用されていなかったり、職員間で十分情報が共有されていなかったことでバスへの置き去り事故につながったケースがあります。
毎日の業務のため、確認作業がおろそかになっていることが予想されます。
幼稚園・保育編バスへの置き去り事故を防ぐために
保育園・幼稚園バスへの置き去り事故を防止する対策としては、次のような方法が考えられます。
- 子どもの乗り降りの際に人数を確認する
- 子どもが全員バスを降りた後は車内点検を徹底する
- 登園していない園児がいたら保護者に確認する
- 子どもにも助けを呼ぶ方法を教えておく
- 置き去り防止安全装置を設置する
子どもの乗り降りの際に人数を確認する
子どもがバスから乗り降りをする際は、同乗している乗務員・保育士・添乗員が子どもの人数を把握していることが必須です。
具体的には、日報に乗車人数と降車人数を記入する欄を作るなどの方法が考えられます。日報に乗降人数を記録しておいて、子どもたちの登園後に日報を確認するような仕組みを作っておけば、乗降人数の記入を忘れたとしても、すぐに気づくことができます。
人数が合っていないことに早くに気づければ、車内を点検したり保護者に連絡したりすることができ、置き去り事故を防げる可能性が高まります。
子どもが全員バスを降りた後は車内点検を徹底する
子どもたちがバスを降りたあと、すぐに車内点検を実施するのは置き去り防止対策として当然のことです。乗務員や運転手は、子どもが眠ってしまったりして背もたれや座席の下など死角に入りこんでいる可能性も考慮して車内の隅々まで確認することが必要です。停車した状態で車内を歩けば、死角となる部分も確実にチェックすることができるため、置き去りになった子どもがいたとしても速やかに発見することができます。
2023年4月からは、置き去り事故安全装置も導入されていますが安全装置を過信せず、目視でも確実に安全確認をすることが大切です。
登園していない園児がいたら保護者に確認する
保護者から欠席の連絡が来ていないにもかかわらず子どもの姿が見当たらない場合、すぐに保護者に確認を取るのも一つの対策です。保護者が忙しさのあまり欠席連絡を忘れている可能性もありますが「連絡を忘れているだけだろう」と思い込んで確認を怠ると、子どもがバスに置き去りにされている可能性を見過ごしてしまいます。
子どもを確かにバスに乗せたはずなのに「登園していない」と園から連絡がくれば、保護者も異常事態の発生に気付くことができます。
置き去り事故だけでなく様々な危険を防ぐためにも、保護者への確認は重要です。
子どもにも助けを呼ぶ方法を教えておく
バスに置き去りにされたと子ども自身が気づいた場合、どのようにして助けを呼べばよいか事前に教えておくのも一つの対策といえます。具体的には、大声を出したり、クラクションを鳴らしたりして助けを呼ぶことになります。手を使ってクラクションを鳴らすのは、子どもの力では難しいのでおしりを使って座るように押す訓練をしておくとよいでしょう。
ただ、すでに意識がもうろうとしていたり、そもそも閉じ込められている状況を理解できていない場合もあるため子ども自身の訓練に頼るのはあまり現実的ではありません。置き去り事故については、周りの大人が防止を徹底するべきといえます。
置き去り防止安全装置を設置する
2023年4月から、幼稚園や保育所、認定こども園などを対象に置き去り防止安全装置の設置が義務化されました。置き去り防止安全装置を搭載していれば、置き去りの可能性を大幅に減らすことができます。置き去り防止安全装置の設置には一定のコストがかかりますが、補助金により助成される場合もあります。
子どもたちの安全を守るためにも設置している施設が増えています。置き去り防止装置については、あとのセクションで詳しく解説します。
政府の「こどものバス送迎・安全徹底プラン」について
幼稚園・保育編バスへの置き去り事故で相次いだ死亡事故を受けて、政府はバス送迎に当たっての安全管理の徹底に関する緊急対策「こどものバス送迎・安全徹底プラン」をとりまとめました。
参考:こどものバス送迎・安全徹底プラン~バス送迎に当たっての安全管理の徹底に関する緊急対策~(内閣官房・内閣府・⽂部科学省・厚⽣労働省・国⼟交通省・警察庁)
この政策により、バス降車時の所在確認と安全装置設置が2023年4月から義務化されました。
子どもがバスに乗降する際に点呼法などを用いて所在を確認したり、安全装置を運用して子どもの安全を確保したりすることが義務付けられています。
参考:「こどものバス送迎・安全徹底プラン」の進捗について(保育所、幼稚園、認定こども園及び特別支援学校幼稚部におけるバス送迎に当たっての安全管理の徹底に関する関係府省会議(第5回))
置き去り防止安全装置について
置き去り防止安全装置には、大きく分けて「降車時確認式」と「自動検知式」があります。
降車時確認式
降車時確認式の安全装置は、バスのエンジンを切ると、車両後部の装置を操作するまで警報が鳴り続けるシステムです。操作が行われないまま一定時間が経過すると、車外にも警報が鳴り響きます。これにより、運転手や乗務員が警報音を止めに車内を後部まで歩いていく途中で、子どもが残っていないかを目視で確認することになります。
設置コストがあまりかからない一方で、ヒューマンエラーが関与する余地が残るのが難点です。
自動検知式
自動検知式の安全装置は、カメラなどのセンサーが動きや振動・鳴き声などを検知するシステムです。エンジンが停止してから一定時間経っても車内に反応があると、車外に警報を鳴らします。ヒューマンエラーが入りこみにくいのがメリットですが、まれにセンサーが誤作動する現象が報告されています。
安全装置は子どもの命を守る大きな力になりますが、最終的には人間の目でしっかり確認する必要があるのです。
降車時確認式と自動検知式を組み合わせた「併用式」の安全装置も提供されています。
置き去り事故を防止して子どもたちを守る
幼稚園・保育園バスへの置き去り事故を防ぐために、大人ができることはたくさんあります。中でも、子どもがバスに乗り降りする時・全員が降りた時、運転手や添乗員がバスの車内や周辺を確認するのは最も効果的な対策といえます。
幼稚園・保育園内においても、出欠確認のシステムをきちんと運用し職員や保護者との間で情報を共有することでいたましい事故を防ぐことができます。
子どもが車内に閉じ込められてしまうと、自力で逃げることはできません。2022年9月の置き去り事故では、死亡した園児は水筒の中の飲み物を飲み干し衣服を脱ぎ捨てた状態で発見されたということです。
このような悲しい事故を二度と繰り返さないためにも、安全装置を適切に利用するとともに、働く職員全員で安全確認する仕組みを確実に把握しておく必要があります。
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